皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)ー塩野七生
中世欧州史の読み物として、比肩のない書籍。
著者の塩野さんは、叙勲も受けたほどのこの分野での大家。
暗黒の中世と呼ばれるほど、もともと資料の少ない欧州中世史ですが、
さらに日本語となると、
参考書的な資料はあっても、読み物として読めるものは
限りなく少ないと思います。
皇帝フリードリッヒ二世という
神聖ローマ皇帝の生涯を追った作品のため、
フリードリッヒ二世が残した代表的な事業は、
②カプア憲章・メルフィ憲章(教会法から、ローマ法による統治)
③第六次十字軍遠征(エルサレムの無血解放)
④ロンバルディア戦役(北伊・自治都市の平定)
上巻ではこの辺りまで。
フリードリッヒ二世の人物像は、
極めて合理的な判断を行い、
信仰心などとは縁のない人物として書かれている。
それは、
エジプトのカリフ:アル・カミーフとの外交によるエルサレム解放
これに加えて、皇帝本人もアラビア語を喋れたという点からも、
国際的感覚を持った皇帝だったということを物語っている。
それは、権力基盤がシチリア島という
キリスト圏とイスラム圏との間に位置していたということもあったことも
影響している。
アル・カミーフとの遣り取りなどは、
時に和やかな雰囲気だったということからも、
この二人の親密性・親近感を記している。
これは、
影響しているようにも思える。
ルネッサンスの先駆けと位置づけられているのも、
中世ローマ教会の影響力を低下させた功績によるところが大きいと思う。